歴史刻む幻の米 2017年11月06日

この「朝日」は岡山県で栽培されており、いま多く流通しているコシヒカリやあきたこまちのルーツで、その歴史は古い。誕生、出生は明治時代の京都である。日ノ出という品種を育てていた田んぼにて、特異な稲が発見された。その稲が品種化されるにあたり、日の出から連想されてくるイメージとして「旭」と名付けられた。
その後、大正時代に新品種育成を行っていた岡山県農業試験場において、「旭」をベースにした品種改良が行われ、新品種デビューを迎えた。しかし岡山県にはすでに同じ名前の品種があったため、新たに「朝日」という名で登録された。さらに品種改良は進み昭和の時代は従来の朝日より収量が多く、背丈の短い「朝日47号」が普及し、岡山の看板銘柄となっていった。平成に入り、現在はヒノヒカリが岡山県のメインとなっているが、今でも岡山南部で栽培されている。
農産機械の進歩とともに品種も進化が進み、栽培のしやすさなども重視されるようになってきており、今では「朝日」の栽培数は少なくなってきている。前述のヒノヒカリやアケボノなどの品種へとシフトする作り手が多くなり、今では希少な存在となり、巷では「幻の米」とまで呼ばれるようになっている。
そんな幻の米「朝日」は大粒で、甘さは控えめである。炊き上がりをパッと見た感じでは、艶やかさを感じる。歯ごたえはしっかりしており、食べ応えのある硬さ。硬すぎることはなく、芯まで火が通ってお米らしいねばりを感じながら、ほのかな甘みが味わえる。その粘りはあまり強くないがこれが程よい。おむすびやお寿司に向いていると言われるのを実感できるほどに、口内での明瞭な存在感・咀嚼感がある。冷蔵庫で寝かせて炊いた翌日に食べてみると、グズグズボロボロにはならずに、しっかりとした食感を残していた。甘さと粘りが強い米が多くみられる中、あっさりした食べ心地であり、豪華なおかずを引き立てるだろう
幻の米ゆえ、見かける機会はきっと少ないが、見かけた際にはぜひチェックしてほしい。長きにわたり作られてきたその味をぜひご賞味あれ。